ご存じ、唯一の純国産旅客機として名機との評価も高い中、耐用年数切れにより全国の空路から惜しまれつつも引退して行くYS-11。ワタシの生涯で最初で(たぶん)最後の、YS-11への搭乗記。
ワタシの家は丘珠空港の離着陸ルートの直下にあるんですが、昭和52年にこの地に住み始めた当初は、日本近距離航空(NKA)のDHC-6が道内便としてのどかに飛んでいました。その後、旅客増から機材は順次YS-11におきかえられていました。聞いた話によるとNKAがYS-11を購入した価格は1機約3000万円だとか。並の観光バスの新車1台分ですね。
気がつくと丘珠発着の道内路線は全てYS-11になっていました。ワタシは基本的にこの機種が好きです。
空港で近くで聞くとけっこうけたたましい騒音ではありますが、航路直下で聞くとぼよーんとしたなかなかのどかな音です。こののどかな音とともに我が家の暮らしがありました。
聞けば、この唯一の国産旅客機YS-11はまもなく姿を消すとのこと。考えてみれば、航路下でさんざん音も聞き姿も見ていたものの、乗ったことが一度もありませんでした。こりゃあ一度は乗っておかねばならない。
2001年暮れ、稚内出張があったのを機に、運航不確実性のリスクを承知で、いちかばちかYS-11の便を出張旅費との差額自己負担で予約しました。
幸い当日は好天。定員56名満席(乗客構成はほとんどビジネスマン)でのフライト。冬季は1日1便しかなく不便きわまりない路線ですが、その需要の多さにはちょっとびっくり。エンジン始動前の機内に乗り込むと、暖房されていなくて吐く息も白い寒さ。4列×14=56名の機内は感覚的にバスそのもの。天井についている照明も20年くらい前のバスみたい。
座席は8A。窓側だけど、なんとここが非常口。緊急時にはあなたが避難誘導に協力してもらうことになりますみたいな説明の書かれた紙片を渡される。窓はカーテンが内蔵された二重構造で外が見えにくい。うーん。
離陸前、客室乗務員が来て、「あんたの席は非常口だから足元に荷物を置かないで」との要請。そんなこといったって頭上の棚はサイズが小さくて手荷物が入る余裕なし。フタもないし。なんか、雑誌と毛布が置いてある。荷物はどうするんだ・・・前席の座席下に無理無理押し込んでなんとかヨシとなりました。
エンジンが始動して離陸。たちまち機内の温度が上がる。乗客は皆コートを着たままだったけど、こうなってくるとさすがに暑い。暑いけど脱いでも置く場所がないし。まあ、数十分で着く短距離航路だから、この程度は堪え忍ぶしかないか。
これより前に乗ったことがあるのはB747SR、B747-400、L-1011、MD90、B767-300・・・と、中大型のジェット旅客機ばかり。YS-11のような機長が操縦桿を操作している様子がそれなりに伝わってくるこのクラスの機体、というか、そもそもプロペラ(ターボプロップ)機は初体験とあって、おおお、おお、お、って感じ。もっと小さいセスナとか乗ったらけっこう怖いんだろうな。。。
下界から見てるとかつて幾度も塗り替えられた塗装のおかげで古くささは感じませんが、実際に乗り込み、客室内装や窓から見るエンジンまわりのリベット打ちの機体などを見ると、かなり年季が入っている印象を強く受けました。
高度も低いので(天気が良いこともあって)地上の様子がよくわかるまま飛行。どこらへんを飛んでるのかよくわかっていいもんですな。苫前や天塩川河口の風力発電風車群もよく見えるし。
よく乗る羽田新千歳の空路だと高度が高いので、東北地方の地上が見えてもいまいちどこらへんなのか把握しきれないし。速いのはけっこうなんですが、1時間の飛行の間に季節まで変わっちゃう、まるでワープでもするかのような羽田新千歳線に比べると、別の意味での飛んでる実感があります。まあこのへんはYS-11に限った話でなく、置き換わるDHC8-300でも同じことなんですが。
稚内着陸。やっぱ慣れないもんだから進入時の振動にもちょっと恐怖感が(臆病者)。短時間の飛行、狭い機内ということもあって離陸から着陸まで一度もCAは客室に姿を見せずに終わりましたが、こんなもんなのかな。てゆーか、CAは何のために乗ってるんだかわからんような気も・・・
このときは北海道の空から消え去る前にもう一度くらいはYS-11に乗れる機会があるかなと思っていましたが、結局その後ANK便を利用することなく、YS-11は全て去ってしまいました。自宅の上空を飛んで行くのも全てカラフルなA-netのQ300やHACのSAAB340になってしまいました。これら舶来ターボプロップ機にはまだ乗る機会は訪れていません。一度だけでしたが、この日、好天のもとYS-11に乗れたことをいい思い出としてきっと忘れません。
このあとこのJA8772は2003年8月31日の女満別線をファイナルとして飛び、その後はタイのプーケットエアで真っ赤に塗られてHS-KUOとして余生を送っているらしい。
http://www.nhirai.com/ys11.htm
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丘珠で出発準備中
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機内。バスみたい
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8Aからの左翼エンジン
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ロールスロイスのエンブレム(シール)も半分剥がれかけ
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苫前の丘陵地の牧場に散在するトーメンの風力発電風車群
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天塩川河口(幌延町)に一直線に並ぶ風力発電風車群
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稚内空港に到着
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CAMERA: OLYMPUS C-900ZOOM(1.3MegaPixel)
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