<流通の旗手は今 検証・北海道現象>中*デフレの風の中で*マイカル北海道、ラルズ、北雄ラッキー、北海道西友

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2001/08/08 ページ:12 文字数:3535 書誌情報...

<流通の旗手は今 検証・北海道現象>中*デフレの風の中で*マイカル北海道、ラルズ、北雄ラッキー、北海道西友
 スーパー業界は長引く消費低迷や競争激化による販売単価の下落に直面している。そんな中で「北海道現象」の一角に挙げられた総合スーパーのマイカル北海道(本社・札幌)、食品スーパーのラルズ(同)はこれまでの成功体験を踏まえ、家族がそれぞれの食事を取る個食化に対応した品ぞろえなどを強化。北雄ラッキー(同)、北海道西友(同)のように、総菜などで魅力ある売り場づくりを工夫する店もあり、各社が新しい時代の風をどうつかむか模索している。
■マイカル北海道
*地域に応じ店舗運営
 釧路サティ(釧路管内釧路町)は若い女性に人気の衣料ブランド「エゴイスト」や「ピンクハウス」「コムサ・デ・モード」など専門店が並ぶ。シネマコンプレックス(複合映画館)も併設し、週末は若者たちのデートコースにもなるという。
 総合スーパー道内最大手のマイカル北海道が展開する同店は昨年十一月、店舗面積を一・六倍の約三万平方メートルに増床し、七十を超すブランドショップを新たに導入した。二〇〇一年二月期の直営部分の売上高は百三十億五千万円で、スーパー業界で全道一を誇る。
 「デフレとはいえ、お客が衣料も食品も質を重視する傾向はむしろ強まっている。専門性を高めることで根室など遠くからも来ていただいている」と小笠原博店長(取締役)は胸を張る。
 マイカル北海道は総合スーパーの「ニチイ」からより百貨店に近い性格の「サティ」への業態転換が成功し、一九九九年二月期に初めて年商一千億円を突破した。サティは道内に二十店。釧路はブランド重視の商品構成が特徴で、地元百貨店も含む大型小売店の「地域一番店」を目指す。
 ジャスコを核として昨年九月に開業した「イオン釧路昭和ショッピングセンター」(店舗面積二万七千平方メートル)も追撃できず苦戦している。釧路市内の競合店幹部は「サティは増床前後に有力ブランドを次々と取り込み、弱点の見つけにくい売り場をつくり上げた」とこぼす。
 マイカル北海道は店頭(現ジャスダック)市場登場後わずか三年半の昨年二月、東証一部上場を果たした。〇一年二月期の単独決算は売上高が前期比9・1%増の一千二百十七億一千九百万円、経常利益は同0・3%増の三十九億五千二百万円と七年連続の増収増益。
 釧路のようなブランド重視の店舗は同じ地方中核都市の帯広、北見でも展開。一方、商圏の小さな余市サティなどではブランドの構成比を下げてスーパーとしての性格を強め、札幌圏の店にはその中間的な性格を持たせている。地域の実情に応じた店の運営がマイカル北海道の強さの秘密だ。
 親会社のマイカル(同・大阪)は経営再建中だが、マイカル北海道の大川祐一社長は「地域社会に満足していただける生活百貨店の『サティ』をより完成に近づけていきたい」と以前から語り、自信をみせている。
 ただ、既存店の売上高は〇一年二月期に前期比1・4%減となった。昨年八月には手稲サティ、今年一月には新琴似サティ食品館を閉鎖。地域ごとの店舗運営をどう強化していくか−が重要な課題だ。その答えの一つが釧路サティではないか、と他社は警戒している。
■ラルズ
*個食化への対応着々
 「『北海道現象』といわれ始めた三年前より価格低下がさらに進行した。この苦境下で勝ち抜いた企業が『ネオ(新)・北海道現象』の一員として、大きく飛躍する。今はその夜明け前の段階だと思う」
 「北海道現象」の一角に挙げられた食品スーパー道内最大手のラルズの横山清社長は深くかみしめるような表情で語る。
 快進撃を続けてきた同社も低価格化と無縁ではない。二〇〇一年二月期決算(単独)は売上高が前期比4・4%増の八百八十二億四千万円と増益を確保したものの、経常利益は同13・8%減の二十九億三千八百万円と十年ぶりに減益に転じた。既存店(出店後一年未満の店舗を除く)の売上高は同6・0%減と伸び悩んだ。
 向かい風の中で、ラルズはディスカウント業態「ビッグハウス」のかじ取りを少しずつ変えようとしている。
 一九九四年四月に札幌市北区太平で一号店が開業したビッグハウスは、一個より二個、二個より箱買いのほうが安い「一物三価」が消費者の絶対的な支持を得た。同社は「基本路線に変わりはない」としながらも、まとめ買いを前提とする一物三価と、加速する個食化の現象をどう調和させるかの実験を始めた。
 九九年十月に開業した「ビッグハウスイースト」(札幌市厚別区)では今年六月から、イカ、ハマチなど刺し身の切り盛りを店頭に並べている。一キロ入りの大型パックを単品で大量販売してきたひき肉などでも、新たに中型、小型パックを導入した。
 大坂光克店長は「消費者は生ラムもサガリも食べたいと思っている。食卓の多様化にこたえ、買いやすい量の品もそろえた」と話す。同店の三−七月の売上高は前年同期比2・2%増と好調だ。
 ビッグハウスはラルズグループの稼ぎ頭。道東ラルズ、道北ラルズなどを含むグループの売上高一千二百四十七億円(〇一年二月期)の四割強を占めている。過去七年間で二十店舗を出店したビッグハウスは、今後数年で計三十店舗、売上高一千億円体制の達成を目指す。
 ビッグハウスを「旗艦店」と位置づける横山社長は「低価格化の時代に合わせて『安さ』を極め、引き続き『鮮度』も追求する。その上で、お客さまの食卓の風景を意識した売り場づくりを進めていく」と今後の戦略を強調する。
 横山社長は「好況は自分の手でつくる」の著書で知られる。低価格化という大転換期、さらに体質を強化した企業が「ネオ・北海道現象」の有力メンバーとして「当確」を勝ち取るとみている。
■北雄ラッキー、北海道西友
*売り場統一や少量化
 「北海道現象」に挙げられた大手スーパーも既存店の売り上げが伸び悩む中、顧客の満足度をどう高めるかに知恵を絞り、業績を伸ばす新顔が登場した。
 その一つが、北雄ラッキーが今年三月に札幌市北区新琴似に開業した「新琴似四番通店」(店舗面積約三千九百平方メートル)。最近、道内のスーパー業界関係者がこぞって視察に訪れている。
 店内入り口にはキュウリ、ナスなどの青果物が並ぶ。天井をむき出しにしたことで高さ四・三メートルを確保し、天井の色を黒にしてライトに照らし出される商品群を際立たせる演出をしている。
 同社の井本逸夫専務は「米国では買い物をする女性客が美しく見えるように売り場の色や光に配慮している。そんな店舗形態を取り入れた」と打ち明ける。
 特に業界関係者が注目しているのがサラダ売り場だ。レタスからイカマリネ、カニ風味サラダ、フルーツなど実に多彩だ。通常のスーパーではレタスのサラダは野菜売り場に、イカマリネは鮮魚売り場に別々に陳列する。大手スーパー幹部は「量販店では売り場ごとに縦割り。こうした統一した売り場は運営コストがかかるなど、なかなかつくれない」と話す。
 弁当、揚げ物など総菜の品ぞろえも同社の従来店より三割増やすなど、手間をかけた売り場づくりが目立つ。
 新琴似四番通店はマイカル北海道が今年一月に閉店した食品スーパー「新琴似サティ食品館」を引き継いで開業したが、年商は目標の二十六億円を大幅に上回りそうだ。
 一方、北海道西友の宮の沢店(札幌市西区)は、西友の全国約二百二十店舗でも売上高の伸び率はトップクラスだ。今年三−七月の売上高は前年同期に比べ二割増を維持している。
 しかし、宮の沢店も一九九九年二月の開業後は苦戦続き。転機は地下鉄、バスに直結する立地を生かして、鮮魚、精肉、青果の生鮮三品を中心に平日客の取り込みにさまざまな工夫を始めたことだ。
 会社帰りのOLや単身者を狙って商品の少量パック化を積極的に進めた。西友の一般店舗では肉類は百グラム前後を少量パックの容量としているが、宮の沢店では五十−八十グラムまで下げた。さらに月曜の「やおやの日」、水曜の「魚の日」など日替わりで特売を打っている。
 同店の食品購入客数は平日が平均四千人で、週末の三千人を大きく上回る。同店の椛山まさる店長は「食品をしっかり売ることで、二階の衣料品売り場などに立ち寄るお客さんも増えた」と確かな手ごたえを感じている。
 
【写真説明】釧路サティの靴売り場。約1500品目と道東一の品ぞろえを誇る=釧路管内釧路町【写真説明】ラルズグループの出店戦略の柱となる「ビッグハウス」。肉売り場には小分けしたパックも並ぶ=札幌市厚別区のビッグハウスイースト【写真説明】凝った売り場の演出と豊富な品ぞろえが売り物の北雄ラッキー「新琴似四番通店」=札幌市北区


<解説>ジャスコ集中出店*札幌で攻勢を加速

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2000/07/18 ページ:10 文字数:810 書誌情報...

 <解説>札幌市東区に二〇〇二年三月、道内三店目となる「札幌元町ショッピングセンター(SC)」を出店するジャスコ(本社・千葉)は、集客力の高い札幌を「北海道戦略の核」と位置づけている。今回の札幌元町SCと今後の集中出店は、他の本州大手に比べて、これまで出遅れていた札幌において、出店攻勢を加速、一気に巻き返すことに狙いがある。
 同社は、これまで道内展開を子会社の北海道ジャスコ(同・札幌)の食品スーパーに限定してきた。しかし、今年九月に釧路市昭和、十一月に札幌市清田区平岡に道内有数規模の大型SCを相次いでオープンする。十月に同市北区に出店する予定だった「新琴似SC」は市の開発不許可で凍結状態にあるが、「二〇〇〇年は北海道で第一歩を踏み出す記念の年」(同社)となる。
 同社の出店戦略について、岡田卓也名誉会長相談役は「札幌は中心部を除いて、一万平方メートル以上の大きな商業集積が少なく、魅力的な場所がいくらもある」と指摘、集中的な店舗展開が可能であると強調する。別の同社幹部も「人口密度が高い札幌市内では人口三十万人に一店は出店できる。約百八十万人の人口から単純に割っても、あと五、六店ほどは可能だ」という。
 集中出店は物流面で効率的であるのに加え、「販売促進活動の面でもテレビCMなどのマス媒体を有効に使える」(同社)といい、既に同社では、札幌市内の数カ所で新たな出店地の物色をしているもようだ。また旭川や函館、帯広など中核地方都市でも「ある程度の規模の店舗が出店できる」としており、出店攻勢が道内各地に波及することも予想される。
 ただ、札幌元町SCの出店地周辺は、イトーヨーカ堂やダイエーのほか、札幌東急ストア、コープさっぽろなどがひしめいている。ジャスコが乗り込むことで、各店が消費のパイを食い合う激しい競争は必至で、札幌平岡SCとともに同社の今後の札幌攻勢を占う意味でも重要な試金石になりそうだ。(伴野 昭人)


<いんたびゅー>岡田卓也さん(74)*ジャスコ会長*道内での出店戦略は*もっと札幌に大型店を

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2000/04/13 ページ:8 文字数:1171 書誌情報...

<いんたびゅー>岡田卓也さん(74)*ジャスコ会長*道内での出店戦略は*もっと札幌に大型店を
 大手スーパーのジャスコ(本社・千葉)は、今年九月の釧路に続き、十一月の札幌・平岡と道内で大型ショッピングセンター(SC)を相次いで開業する。業界三位のジャスコはこれまで、子会社の北海道ジャスコが展開する食品スーパーなどを除いて道内で直営店舗を持たないできた。道内での本格的な店舗展開を前に、同社の岡田卓也会長に、今後の北海道での出店戦略などについて聞いた。
(聞き手・伴野昭人)
 −−当初は年内に道内で三店舗を開店する予定でしたが、札幌市北区新琴似の大型SCは市の開発不許可で凍結状態です。
 「新琴似の出店計画のようにハードルが高い場合もありますが、大型SCの出店は工場誘致に比べてもかなりの雇用を生み、地域の発展に役立つ部分もあると考えています。現在、札幌市郊外には一万平方メートル以上の大きな商業施設が少ないので、映画館など娯楽施設や大駐車場を備えた大型SCがもっとあっていい。実際、札幌には出店に魅力的な場所がまだいくつもあります」
 −−道内での出店戦略をどう描いていますか。
 「札幌市とその近郊では、十一月にオープンする札幌平岡SC(清田区)のような大型店を四、五店は出店することが可能ではないかと思う。旭川や帯広、函館など道内の地方中核都市でも、ある程度の規模の店舗を各一店ずつぐらいは出店できると見ています」
 −−流通外資の本格参入などで小売業界の競争も一層激化しそうですね。
 「日本の小売市場は規制などで長く保護されてきたせいか、国内の流通業者はまだのんきに構えていますが、今や世界最大の小売りグループ、米ウォルマートの上陸も間近です。国際的に巨大市場の日本は『残されたジパング』として魅力的に映っています。札幌も有力な市場の一つとしてここ三、四年の間に外資が乗り込んで来る可能性が高いと思います」
 −−道内では、子会社の北海道ジャスコとジャスコを中心としたイオングループの一員である札幌フードセンターが十月に合併し、「マックスバリュ北海道」が誕生しますが。
 「新社名の『マックスバリュ』はグループ各社が全国で九十店展開中の食品スーパーの『マックスバリュー』にちなんだものです。今後、グループ総力で運営ノウハウの確立と店舗網の拡大を進めます。数年後にはジャスコの食品販売部門と合わせ、年間売り上げをグループ全体で二兆円規模まで拡大し国際競争に勝ち抜きたい。今回の合併はそのためのワンステップです」
<略歴>
 おかだ・たくや 1948年、早大商学部を卒業し、59年に家業の呉服店・岡田屋の代表取締役、70年にジャスコ社長、84年に会長に就任。東京商工会議所副会頭なども務める。今年5月16日の株主総会で名誉会長相談役に退く予定。三重県出身。


ジャスコ*道内戦略練り直しへ*新琴似SC計画白紙に*当面は2店体制

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2000/02/27 ページ:11 文字数:691 書誌情報...

 ジャスコ(本社・千葉)の札幌市北区新琴似での大型ショッピングセンター(SC)建設をめぐる開発不許可問題は、開発主体の岩倉土地開発(同・苫小牧)が二十六日、札幌市開発審査会への審査請求を見送り、出店計画が白紙になったことで、ジャスコは道内戦略の見直しを余儀なくされそうだ。
 道内では、イトーヨーカ堂、ダイエー、西友など本州大手スーパーが店舗の展開をしているが、業界三位のジャスコはこれまで、関連会社の北海道ジャスコが展開する食品スーパー「マックスバリュー」などを除いては、直営店舗を持たないでいた。このため、ジャスコは今年は道内で一気に大型直営三店の開業でライバル各社への巻き返しも狙っていた。
 ジャスコは九月に「釧路昭和SC」(釧路市昭和地区)、十月に「ジャスコ新琴似SC・グレートシティ」、十一月に「札幌平岡SC」(札幌市清田区)の開業を計画。各店舗の店舗面積は、札幌平岡SCの約五万四千平方メートルを筆頭にいずれも道内の大型店で有数規模の大きさだ。
 しかし、その一角である新琴似SCが白紙に戻ったことで、今後、新たな場所で出店する場合は、現行の大規模小売店舗法(大店法)に代わり、今年六月に施行される大規模小売店舗立地法(立地法)での申請手続きを行うことになる。
 立地法での出店申請は審査期間だけで約一年かかるといわれ、新琴似SCに代わる店舗の開業が大幅に遅れるのは確実。当面は釧路、札幌と離れた場所での二店体制となり、「物流効率の点でコストが高くつくのでは」と指摘する流通関係者もいる。新琴似の出店計画が袋小路に入った影響は、ジャスコの店舗展開に少なからず及ぶ可能性がある。


札幌・新琴似*ジャスコ出店白紙に*岩倉土地開発*審査請求を見送り

媒体:北海道新聞夕刊全道 掲載日:2000/02/26 ページ:2 文字数:429 書誌情報...

 ジャスコ(本社・千葉)が札幌市北区新琴似で計画する大型ショッピングセンター(SC)建設に対し、札幌市が開発主体の岩倉土地開発(同・苫小牧)に開発不許可を通知した問題で、岩倉土地開発は二十六日、市の決定に対する不服申し立てを受ける市開発審査会に審査請求を行わないことを明らかにした。これで、ジャスコの出店計画は白紙に戻った。
 岩倉土地開発は同日、「市の土地利用方針と一致しないため、大規模商業施設の開発は難しいと判断した」と開発断念の考えを示した。
 札幌市は昨年十二月、ジャスコの出店予定地では「将来的に宅地を整備する計画で、物販施設の建設は市の土地利用方針と合致しない」などとして開発不許可を岩倉土地開発に通知していた。
 岩倉土地開発には、市開発審査会に審査請求を行う道が残されていたが、請求期限が今月二十八日と迫っていた。
 ジャスコの「新琴似SCグレートシティ」は、昨年十月に行われた大規模小売店舗審議会で店舗面積三万五千五百平方メートルで結審していた。


ジャスコ*開発不許可の新琴似SC*「遅れても出店」*岡田会長意向

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2000/02/09 ページ:11 文字数:343 書誌情報...

 総合スーパー大手のジャスコ(本社・千葉)の岡田卓也会長は八日、札幌市内で開いた記者会見で、同市北区新琴似に出店を計画している大型ショッピングセンター(SC)建設計画に対して同市が開発不許可を決めたことについて、「計画が遅れても、(六月に施行される)大規模小売店舗立地法(大店立地法)に従って出店したい」と出店を断念しない意向を示した。さらに「札幌市は時代遅れだ」と計画を認めない市の対応を批判した。
 同会長はまた、今年十一月に開業を予定している大型SC「札幌平岡SC」(札幌市清田区)について、核店舗の一つに予定していたイオングループの百貨店ボンベルタ(店舗面積一万五千平方メートル)が出店を取りやめたことを明らかにするとともに、ボンベルタの代わりに「大型専門店を出店する」と述べた。


<インサイド>ジャスコ*新琴似の計画ピンチ*札幌市が開発不許可*迫る開店の“期限”

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2000/02/04 ページ:11 文字数:1440 書誌情報...

<インサイド>ジャスコ*新琴似の計画ピンチ*札幌市が開発不許可*迫る開店の“期限”
 スーパー大手のジャスコ(本社・千葉)が札幌市北区新琴似に出店を計画している大型ショッピングセンター(SC)建設計画で、札幌市が開発不許可を決め、開発主体の岩倉土地開発(同・苫小牧)に通知した問題が波紋を広げている。ジャスコ、岩倉側が市の決定を不服とし、“異議申し立て”を受ける市開発審査会に審査請求を行っても、裁決まで二カ月以上の時間がかかる。さらに不許可が覆った場合でも、ジャスコが今年十月に予定していた店舗オープンがずれ込むのは必至。状況次第では出店断念に追い込まれる可能性もある。(経済部 伴野昭人)
 「ジャスコ新琴似ショッピングセンター・グレートシティ」は、ジャスコや大型スポーツ専門店などが入る計画で、昨年十月の大規模小売店舗審議会で店舗面積三万五千五百平方メートルで結審した。マイカル小樽(店舗面積九万八千平方メートル)や今年十一月オープン予定のジャスコの「札幌平岡SC」(同五万四千七百平方メートル)に次ぐ道内三番目の大型店となる。
 昨年十二月末、市は岩倉土地開発に対し、開発不許可を通知。岩倉土地開発の幹部は「全く予想しなかった事態で、ショックだった」と振り返る。市の部長らでつくる宅地指導委員会が審議し、通知したA4判一枚の文書は、不許可の理由を《1》市街化調整区域の開発を認める特例にも該当しない《2》将来的に宅地を整備する計画で、物販施設の建設は市の土地利用方針と合致しない−と記している。
 出店予定地は、石狩市との境界に近い道道沿いの中央バス自動車学校の隣接地で、現在は野球場となっている。
 市街化調整区域のため、原則的に開発行為はできないが、出店予定地の五ヘクタールを含む約二十五ヘクタールは一九九八年の都市計画決定で、住宅整備を見込んだ特定保留区域に指定されている。
 ジャスコ側は特定保留区域であれば、開発行為が可能として出店を判断したとみられるが、市は「特定保留区域でも住宅開発を見込んだ所で、単発的に五ヘクタールもの土地が大型商業施設として開発されては困る」と説明する。
 これに対し、周辺地権者の一人は「ジャスコの出店に協力し合っていこうと申し合わせていた。住民の利便性も高まるし、従業員ら約千五百人の雇用も生まれると聞いている。市はもっと柔軟に対応してほしい」と話す。また流通業関係者は「道内では市街化区域への編入を見込んだ特定保留区域でのスーパー出店は珍しくない」と首をひねる。
 市開発審査会(学識経験者ら七人で構成)への審査請求の期限は今月二十六日と迫っているが、岩倉土地開発の幹部は「どう判断すればよいか大変悩んでいる」と苦悩の表情を隠さない。審査会では、これまで三件の審査請求を受理。うち二件を棄却したが、昨年四月には手稲区の宅地造成計画で、市が一度、開発不許可とした処分を取り消す裁決を出している。
 ただ、審査に持ち込んでも、裁決までに最低二カ月がかかることから「十月下旬のオープンは厳しい状態だ」(ジャスコ)。来年一月末までオープンができない場合、現在の大規模小売店舗法(大店法)に代わって今年六月に施行され、周辺環境の保持などを目的とした大規模小売店舗立地法(大店立地法)での手続きやり直しが必要となる。今年九月以降、釧路、札幌の平岡、新琴似と初の直営三店舗をオープンし、北海道での足固めを描いていたジャスコは戦略の見直しを迫られる事態もあり得る。


ジャスコ*札幌・平岡、釧路・昭和*投資ゼロで出店*店舗の価値*証券化し資金調達

媒体:北海道新聞朝刊全道 掲載日:2000/02/04 ページ:11 文字数:537 書誌情報...

 ジャスコが、第一勧業銀行や東洋信託銀行、中央信託銀行などと組み、釧路や札幌を含む着工前の店舗を証券化して売り出して建設資金を調達、事実上、金をかけずに店舗を展開する計画を固めた。関係筋が三日明らかにした。銀行などからの借り入れに頼らず、証券化で店舗の建設資金を賄う。
 同社は、道内では核テナントとして入居する計画の「ジャスコ新琴似ショッピングセンター」を除いて、今年九月に釧路市昭和地区、十一月に札幌市清田区平岡にそれぞれ大型店を自前で建設する。この道内二店のほか、宮城、山形、三重県に各一店舗ずつの計五店舗を建設するが、証券化で合わせて三百億−四百億円の資金を調達し、来年にも着工する計画だ。
 方式は、建設前の店舗の価値をあらかじめ査定して小口に証券化、機関投資家などから資金を集めるもの。資金を借り入れて開発する通常の方法に比べて、証券化での資金調達を実施すれば、開発主体であるジャスコは貸借対照表上の有利子負債を圧縮できるというメリットがあるため、新手法の採用に踏み切ったとみられる。
 スーパー業界は、長引く個人消費の冷え込みなどから各社の業績が低迷。店舗展開のための資金調達が難しくなるケースも出てきそうなため、こうした資金集めの方法が今後、業界内で広まりそうだ。


札幌市*周辺住環境に配慮*ジャスコの出店不許可*感情的しこりも?

媒体:北海道新聞朝刊地方 掲載日:2000/01/13 ページ:19 文字数:1046 書誌情報...

 ジャスコ(本社・千葉市)が札幌市北区新琴似に出店を計画していた大型ショッピングセンター(SC)に対し、札幌市が開発の不許可を決めたのは、周辺住環境の保持を重視したためだ。今年六月には経済規制を目的とした大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、周辺環境への配慮を目的とした大規模小売店舗立地法が施行される。今回の判断はこうした社会的な流れに沿った事例ともいえる。
 SC出店予定地は市内新琴似の市街化調整区域約五ヘクタール。市街化調整区域では原則的に開発行為はできないが、出店予定地を含む周辺約二十五ヘクタールの市街化調整区域は一九九八年の都市計画決定で、宅地として整備開発することを目的に特定保留区域に指定された。地元地権者の要望を受けたもので、将来は市街化区域への編入が見込まれている。
 ジャスコは特定保留区域であれば開発行為は可能であるとして同地域への出店計画を決めたとみられ、昨年十月の大規模小売店舗審議会(大店審)でも、店舗面積約三万五千五百平方メートル、開店日は今年十月二十一日とすることで結審していた。
 しかし、市側は「開発目的はあくまでも宅地整備。住環境を保持するため、大規模小売店の出店はそぐわない」として不許可を決定。背景には、大型小売店の出店は交通渋滞や騒音、夜間営業による治安悪化、店舗から排出されるごみ問題などの発生につながるとの懸念がある。また、予定地は五ヘクタールと特定保留区域二十五ヘクタールの五分の一を占めることもあり、市都市計画課は「宅地整備に与える影響は大きい」と話す。
 大型小売店の出店はこれまで大店法に基づき、既存の小売店との競合を避ける経済規制の色合いが強かったが、最近は交通渋滞や騒音問題をめぐる地元住民とのトラブルといった社会問題の増加が指摘されていた。大規模小売店舗立地法にはこうしたトラブルを事前に防ぐ目的もあり、同法の適用は出店者にとって「規制強化」につながるケースもある。ある市担当者は「ジャスコは法律が経済規制から社会規制に変わる前に駆け込みで出店を申請した」とみる。
 一方で、ジャスコと市は市内清田区のSC出店の際、緑化保全をめぐり意見が折り合わず、結局、ジャスコ側の計画通りに出店が決まった経緯がある。このため、ある流通関係者は今回の不許可を「市の感情的なしこりが影響しているのでは」とみる向きもある。市の判断に不服がある場合は、市開発審査会に審査請求することができるが、ジャスコは「今後の対応は関係者と協議して決めたい」としている。


ジャスコの新琴似SC*開発を不許可に*宅地予定地で不適*札幌市

媒体:北海道新聞夕刊全道 掲載日:2000/01/12 ページ:2 文字数:623 書誌情報...

 ジャスコ(本社・千葉県)が札幌市北区新琴似に出店を計画していた大型ショッピングセンター(SC)「新琴似SCグレートシティ」について、札幌市が開発主体の岩倉土地開発(同・苫小牧市)に対し、開発を不許可とする通知を出していたことが十二日分かった。同社の出店計画は大規模小売店舗審議会(大店審)北海道部会で結審しており、道都市環境課によると、大店審で結審しながら不許可になったのは札幌市内で初めて。
 札幌市都市局によると、出店予定地は市街化調整区域で、現状では基本的には開発できないが、市は同予定地を含む約二十五ヘクタールについて、一九九八年の都市計画決定で将来の市街化区域編入を見込んだ特定保留区域に指定していた。
 このため、市の関係部局で構成する宅地指導委員会で審議した結果《1》市街化調整区域の開発を認める特例にも該当しない《2》将来的には宅地を整備するという計画で、物販施設の建設は市の土地利用方針と合致しない−などとして、昨年十二月二十七日付で岩倉土地開発に対し、不許可を通知した。
 新琴似SCグレートシティは、昨年十月の大店審北海道部会で、店舗面積約三万五千五百平方メートル、開店日が今年十月二十一日とすることで結審していた。
 市の決定に不服がある場合は、通知の翌日から六十日以内に、学識経験者らでつくる市開発審査会に対して審査請求することができる。今後の対応について、ジャスコ広報と岩倉土地開発は「関係者と協議して決めたい」としている。